「お忙しいとは思いますが、またいつでもいらしてください」
花は邪心を振り払うように仲居として返事をしたあと、薙光を見て努めて冷静に笑みを浮かべた。
けれどそんな花を前に、薙光が一歩距離を詰めると改めて花に向かって極上の笑みを見せる。
「昨夜はそなたのおかげで、実に有意義な時間を過ごすことができた」
「え……」
「そこで、そなたにどうお礼をしようか考えたのだが……。我々を最高のもてなしで満足させた褒美に、そなたには心付けとして俺が持つ残りの善を全て譲り渡すことにした」
思いもよらない薙光の言葉に、そこにいたつくもの全員が凍りついた。
「な、薙光さんが持つ善、すべて……?」
花の声も震えている。
花はまさか自分が薙光に課金されるなどとは予想外だった。
「ああ。有り難いことに、近年刀剣を始めとする我々名刀は忙しくてな。ここの支払いに使っても尚、善が有り余っておる。だからその残りを、心付けという名目でそなたに譲り渡そうというわけだ」
ニッコリと微笑む薙光を前に、花は目を白黒させて固まった。



