「……なるほど。そなたの気持ちはよくわかった。……先程は、大変無礼な物言いをして悪かったな」
と、唐突に薙光が、頭を下げた。
花は慌てて我にかえると、「いえいえ……!」と焦った様子で両手を顔の前に突き出した。
「こ、こちらこそ生意気なことばかり言ってしまって申し訳ありません! 人である私が、国宝の薙光様に偉そうなことを言うなんて罰当たりでしたよね……」
途端にそれまでの威勢の良さを失くした花を前に、薙光はくつくつと喉を鳴らして面白そうに笑った。
「そなたは実に面白い女子だ。しかし……そなたの心意気、しかと心に届いたぞ。どうやら俺は少々……頭が固くなっていたようだ」
「え……」
薙光はそう言うと、今度はデザートバイキングの前で笑顔の花を咲かせている仲間たちへと目を向けた。
「今を生きるものたちに、我々の生きてきた歴史を伝えたい。それが我々の本懐であるように……我々もまた、今を生きるものたちの考えを知っていくべきなのだろう」
そっと口元に笑みを浮かべた薙光は、しばらく賑やかな光景を眩しそうに眺めたあとで、徐に花へと視線を滑らせた。
「そなたが教えてくれたことだ。まさか、時代遅れとまで言われるとは思わなんだが……」
クッ、と、口元に手を当て、薙光は喉を鳴らして笑う。
花はまた小さくなって、「すみません」と溢して萎れた。
「謝るな。腹を立てているわけではないのだ。ただ、今回のように俺に歯向かう女子と会うのはいつぶりかもわからぬことで、大変痛快なことであったよ」
そっと目を細めて笑う薙光の笑顔は、まるで無邪気な子供のようでありながらも隙のない美しさを兼ね備えていて、花は思わずポーッと見惚れてしまった。
「互いが互いを尊重し合う。それが共存するということなのだからな。そなたのおかげで改めてそれに気づくことができた。この度は、これ以上ない最高のもてなしをしてくれたことに礼を言う。──ありがとう」
薙光のその言葉を聞いた瞬間、花の目には涙が滲んだ。
──ありがとう。
今はただ、その言葉が何よりも嬉しくて、誇らしい。



