熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 

「他にも、だいだいプリン、だいだいチーズケーキ、だいだいのフォンダンショコラ、だいだい饅頭に、だいだい羊羹……。あ、あと軽食だと、つくも特性だいだいの手まり寿司もご用意しております」

「だいだいの……手まり寿司?」

「はい。だいだい酢を使った酢飯と、新鮮なお魚を使ったお寿司です。こちらもとても美味しいので、是非是非お召し上がりください!」


 花の言葉を聞いた薙光は、それまで戸惑いを浮かべていた表情を消して、今度は脱力したように息をついた。


「本当に……だいだい祭りだな」

「はい。お飲み物にもだいだい入り紅茶、だいだい酒までご用意しております。どれも本当にほっぺが落ちるくらいに美味しくて、最高にオススメの品ばかりです」


 そこまで言った花は、堂々と胸を張った。

 言葉の通り、どれも自信を持ってオススメできるものばかりなのだ。

 だからこそ今、メニューの数々を紹介できることが嬉しくて堪らない。

 どれを食べても幸せな気持ちになることは間違いなく、花自身が身を持って知っているのだ。


「薙光様は、だいだいの語源をご存知ですか?」

「だいだいの語源?」


 ふと、宙を見つめた花は静かな声で薙光に尋ねる。

 すると花の問いに、薙光は何を言っているのだという表情をして首を傾げた。


「だいだいは、冬に熟した実が春になっても落ちずに木についていることから、【代々続く】の意味で名付けられたと言われています」


 これについては諸説あるらしいが、一応どの文献を調べても似たようなことが書いてあった。


「だから、だいだいは【代々家が栄える縁起の良い果物】として、正月飾りにも用いられてきました。熱海だいだいは、とっても縁起がいい果物なんですよ。だから今回は当初の予定よりも多く、メニューに取り入れることにしたんです」


 花は、静かに微笑む。

 そして、狐につままれたような顔をしている薙光を見て、今度は苦笑いを零した。