「きっと……自分の仕事に誇りを持っていらっしゃる薙光様たちであれば、自分たちと一緒に働くものたちへの労いも忘れないと思いまして……」
こうして決まって何十年かに一度、社員旅行をするほどだ。
薙光が自分と一緒に働く仲間を大切に思っているであろうことは容易に想像することができた。
「薙光様にも、何かお取りしましょうか?」
そう言って花が微笑むと、薙光はフッと息をこぼすように笑みを浮かべて、「ならば、そなたのススメのものを」と返事をした。
「それなら、だいだいのマカロンはいかがでしょうか?」
「だいだいの……マカロン?」
「はい。マカロンとは、卵白と砂糖とアーモンドを使った焼き菓子の一種なのですが、今回はそのマカロンの生地に、だいだいの皮を加えて、だいだいを最大限に活かした一品に仕上げました」
もちろん作ったのはちょう助だが、花は試食をした際にはこんなにも甘酸っぱい気持ちになるお菓子があるのかと、感動しきりだった。
「間に挟まっているクリームも、だいだい入りのチョコレートガナッシュとだいだいジャムの二種類を用意しております」
どちらも最高に味わい深い一品だ。
花は手に取った皿に宣言通りマカロンを二種類乗せると、未だに気持ちが揺れているらしい薙光に差し出した。
「どうぞ、召し上がってみてください」
花に言われて、薙光は一瞬、躊躇する素振りを見せた。
けれど、すぐに迷いを払うように咳払いをすると、「では……」と呟き、オレンジ色のマカロンを手に取った。
薙光が手に取ったのは、だいだい入りのチョコレートガナッシュが挟まれたマカロンだった。
薙光は、マカロンを初めて食べるようだ。
手の中のマカロンをまじまじと見たあと、恐る恐るといった様子で口へと運んだ。



