熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします

 


「今でも私は、源翁様を心よりお慕い申し上げております。願わくば……来世でもあなたに巡り会いたい。そのときはまた向かい合って、こうしてふたりで美味しいものを食べて、笑い合いたい……」


 そっと微笑む傘姫の目からは、涙が一筋、頬を伝って零れ落ちた。

 傘姫はたった今、本人が言ったとおり、その身が朽ち果てるまで源翁との約束を守り続けるか、今を生きる誰かの手によって供養されるか……その二択でしか、常世へ旅立つ方法はないのだ。

 ふたりがまたいつか巡り会い、今のように向かい合って食事をすることはあるのだろうか。

 それはまるで、針の穴に糸を通すような運命の確率なのかもしれない。

 それでもいつか、ふたりがまた巡り会えますように──と、花は願わずにはいられなかった。

 想い合うふたりが今度こそ、いつまでも美しい月を眺めていられるように。

 どうか来世ではふたりが幸せになれますようにと、切に願った。