わたしも枝に次々と脚を引っ掛け、地面に足を置いた。



「なんで、一度だけ降りるってことにしたんだよ?」



わたしの方へ歩きながら、彼は聞いてきた。



「こうしたかったの」



近くにいれば、こうすることができる。
わたしはあの時のように、彼の両手を握った。



「こう?」



面食らった表情で、聞き返す彼。


彼ったら、分かっていないな。
それとも、『近くにいたい』と言わせたいんだろうか。


けど、今は聞かせない。


『近くにいたい』というのが、
『本当の理由』だなんて。


だって、分かっていそうな感じだから。
さっきまで面食らっていた彼は、通じたように優しく微笑んでいる。


分かっていなかったら、こんなパステルピンクに似合う、微笑み方をしないとわたしは思う。


握り合うわたしと彼の手の上にそっと、桜の花びらが舞い降りてきた。