わたしと雨月くんは、ほとんど同時に木の枝に座った。
彼の反応を見たくて、わたしは雨月くんをちらりと見る。


くるくると舞い散る桜越しに、彼のきれいな横顔が見えた。



「まあ、登るのも悪くないな」



「ふふっ。そうでしょう?」



少し得意げに、わたしが言ってみせると、雨月くんはくすっと笑った。


突然、わたしは1年前の木から降ろしてもらったことを思い出した。



「ねえ」



「何さ」



「1回だけ降りよう?」



「は?」



わたしがおずおずと言うと、彼は面食らった。
まあ、そりゃあそうだろう。登ったばかりだというのに、いきなり一度だけ降りようなんて普通言わない。



「1回だけ! 後でまた登るから! ね? いいでしょう?」



「分かったよ」



呆れたように笑った後、彼は自分の下にある枝に脚を引っかけながら地面へ降りた。