…そしてその彼。
苗字は思い出せないけれど、下の名前は確かに京といった。俺は人よりも記憶力が良いから、顔も覚えている。

そして…最初は気がつかなかったが、取材の部屋に入り、芝波さんの奥に控えていた目鼻立ちの整った秘書らしき男の顔を見て驚いた。

多分──俺の勘違いである可能性も否めないが、
きっと彼の名前は、京というのだろう。


「なぁ早瀬、今日、芝波社長の秘書っぽい人も近くにいたよな」

「はい。それがどうかされました?」

「んー。あの二人って、付き合ってると思う?」


そう尋ねると、早瀬が少し驚いたように目を小さく見開いたのがわかった。

そして、小さく首を振りながら、違うと思いますと答えた。
そんな早瀬の答えは意外で驚いた。
正直、分かるわけないじゃないですかと片付けられるつもりで振った質問だった。