多くの臣下が見守る中、ヴェロニカは暫くの沈黙の後、ゆっくりと息を吸ってメアリを真っ直ぐに見つめた。

『では陛下。いただいた私の自由を、どうぞお人好しなあなたに捧げたく存じます』

『それは、どういう……』

『血の繋がる者として、女王陛下をお支えしたいのですわ』

　それは、メアリが欲していた関係。
　アクアルーナの姓を持つ者同士、手を取り合えたら、と。

　胸を震わすメアリに、ヴェロニカは、今まで誰にも見せたことのない優しい笑みを見せた。

『わたくしの為に涙を流してくださったあなたを、お傍でお支えしたいのです』

　しかしそこでイアンが口を開いた。

『ヴェロニカ様。あなたはたった今爵位を剥奪された身。陛下の傍にいられる身分ではない』

『ええ、ですから侍女として仕えることも』

『アクアルーナの姓を持つ者が城にあって侍女など、あなたが良くとも陛下の評価に関わります』

　淡々と却下していくイアンにヴェロニカのこめかみが引きつる。

『それならアクアルーナの姓を捨てればよろしいんですのっ⁉』

　何やら雲行きが怪しくなり、メアリが思わず騎士隊長たちと共に整列するユリウスを見た時だ。
　イアンが『陛下』とメアリを呼んだ。

『な、なんですか？』

『ヴェロニカ様は命の危険を賭してダリオのことを陛下に告げました。何か褒美を取らせるべきかと』

『褒美……』

　呟いて、イアンが促す褒美を悟ったメアリは瞳を輝かせる。

『では、爵位を！』