倒れた兄貴の背中は小さかった。背負って部屋に連れて行く。苦しそうに呼吸をする兄貴は見ていられない。体温計を取り出して、測ってみる。39℃…上がっていた。こんな状態で親父と言い合っていたのか…そう思うと自分が情けなくて仕方がない。
兄弟で家族で励まし合ってここまで来た。その言葉が痛い程刺さる。この兄弟の中に俺は入っているのだろうか?俺にとって兄貴の存在はなんなのだろうか…その時、
「そう、ご?どうした?」と声がした。
「兄貴!」薄らと目を開けた兄貴が掠れた声で言っていた。
「泣いてんのか?」
「へ?」兄貴は俺の顔に手を伸ばす。
「奏悟…安心しろ。俺がいる…」そう言って兄貴は目を閉じた。