そう。


10月4日は沼口さんの誕生日。


私の命の恩人とも言える沼口さんを祝わずして誰を祝うというのか。


私は夕食後こっそり白鳥先輩の部屋に伺った。



「沼口さんの趣味ねぇ」


「何色が好きだとか、どんな食べ物が好きだとかそういうことを少しでも教えて頂けませんか。2年半ここにいてどなたよりも沼口さんから信頼されている白鳥先輩なら1番知ってるのではないかと思ったので...」



白鳥先輩は天井を見つめ、しばらく沈黙した。


白を基調とした清潔な部屋は黒羽くんの部屋とは対照的だなぁと感じながら回答をじっと待った。



「あ、思い出した」



突然ぼそりと白鳥先輩が呟いた。



「沼口さんはカラフルでポップなのが好きなんだよ。あと楽しいこともワクワクすることも好き。いつまでも童心を忘れない人だね」


「童心を忘れない...ですか?」


「そう。好きな食べ物もハンバーグとかオムライスとか、子供が好きそうなのを好むし。精神年齢が若いから俺たちみたいなのと付き合ってても疲れないのかもね」



そういうことか。


ようやく分かったよ、沼口さんの若さの秘訣。


沼口さん自身の感性が若くて明るいんだ。


羨ましいな。


私なんか16でどん底に突き落とされて働き出したせいで、所帯染みちゃったし心がすすだらけで真っ黒だっていうのに。



「紗彩ちゃん」


「はい」


「紗彩ちゃんとみんなからの沼口さんへのプレゼントで日帰り温泉なんてどう?沼口さんの代わりに俺たちが協力して1日家事をやって沼口さんには休んでもらう。その間にパーティーの準備をしておく」


「いいと思います!さすが白鳥先輩です」


「誉めてもらえると嬉しいよ」



やっぱり白鳥先輩に相談して良かった。


寮長様々です。


頭が上がりませぬ。



「じゃあそういうことで話を進めるね。当日の役割分担も決めちゃおう」


「はいっ」