由希ちゃんのお昼寝に、母と妹が家に戻り私達3人は 庭でお茶を飲む。
 

「昔も、お母様 ここで本を読んだりしていましたよね。」

別荘の建物は変わっても、眺める景色は変わらない。

私は、子供の頃を思い出す。
 


「そうね。麻有ちゃんと智之、見ながら。本を読んだり、草取りをしたり。あの頃は、一番辛かったのよね、私。家には、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがいたから。」

お母様も、昔を思い出す目になる。
 
「お姑さん、厳しい人だったのですか?」私は聞く。
 
「そうね。私、反対されて結婚したから。お父さんは、帰りが遅いし。家では、ほとんどお祖母ちゃんと二人だったの。」

お母様は、懐かしそうに、話してくれる。
 
「いじめられたり?」お姉様も聞く。
 
「お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、お父さんの親だから。悪い人じゃないのよ。」

お母様は苦笑する。お姉様と私は、頷き合う。
 

「お祖父ちゃんは、厳しい人だけれ 、道理のわからない人じゃなかったわ。町工場から今の会社を創った人だから。お祖母ちゃんは お嬢様だったの。銀行の頭取の娘で。苦労知らず特有の、悪意のない嫌味を言われたりは したわよ。」

お母様は、私達を見る。
 

「でも、ずっと二人で家にいるから 段々情が湧いてきてね お互いに。案外、うまくいっていた方じゃないかな。」
 

「でも、一番辛かったって。」

私は聞いてしまう。お姉様も頷く。
 
「お父さんに、お姉さんがいるのは知っているでしょう。滅多に会わないけれど。」
 

「はい。外交官の伯父さん夫婦ですよね。」お姉様が聞く。
 
「そう。そのお姉さんと、合わなかったのね、私。一方的に、嫌われていたの。」

外交官の伯父さん一家とは、今でも交流がない。

私も、冠婚葬祭で何度か会っただけだった。