ゴールデンウィークは、みんな一緒に軽井沢の別荘で過ごす事になった。

曜日の関係で5連休になる前夜、軽井沢に向かう。
 

「明日は、確実に渋滞するから。着いて寝るだけでも、今日、出発しよう。」

お兄様の提案に、みんなが頷く。
 

お兄様は、社長を継いでから 車の運転をしなくなった。

それまで使っていたワンボックスカーも処分して 今は、お姉様の車で移動している。
 

お父様とお母様には、智くんが運転するワンボックスカーに乗ってもらう。
 

「パパの車は 男の人達が乗って、タッ君ママの車に 女の人が乗るのは、どう?」

絵里加の可愛い提案に、私は笑顔になる。
 

「それは、駄目だよ絵里加。パパの車に もしものことがあったら 会社を守る人が いなくなってしまうでしょう。」

智くんは、優しく絵里加に言う。

私は、はっとして 智くんを見る。

そこまで考えつかない、自分の甘さを反省する。
 

「そうか。社長って大変なんだね。」絵里加は素直に頷く。

智くんは、絵里加の頭を撫でながら、
 
「大勢の社員とその家族を、責任持って守らないとね。」と言う。

尊敬を込めて見つめる私に、智くんは照れた笑顔を向けてくれた。