それが原因で怒っているの? 

でも有名人の結婚なんて、どんな集まりでも関心事だろう。ヒステリックに反応しなくたっていいのに。

それよりも私は、ランセルが早くも昨日のお茶会の内容をしっている事実に驚いた。

あの場に彼へ情報を流している者がいたのだろうか。

そうだとしたら、ランセルはこれまでも私の動きを監視していたことになる。

関心が無さそうな素振りをしながら、水面下では私を警戒していたんだ。

陰険で嫌な感じ……。むっとしているとランセルが一際強い口調になる。

「今後は控えて貰いたい。あなたに口出しをされるのは不快でしかない」

「別に口出しなどしていませんが。王太子殿下の婚約は皆の関心事ですから話題に上っただけです」

「しらばっくれないでもらいたい。ベルヴァルト公爵家のユリアーネ嬢が有力だと、皆の前で宣言したと知っている」

ランセルは忌々しそうに顔をしかめる。

「その情報をどのように手に入れたのか知りませんが、間違っています。ユリアーネが候補だと言い出したのは私ではありませんし、宣言したのもユリアーネ自身です」

「妹に罪をなすりつけるのか?」

彼は軽蔑したように目を細める。何が何でも私を悪者にしたいようだ。

勢いに圧倒されている内に話がどんどん進んで行きそう。もちろんそうはさせないけど。

「そんなことはしません。ランセル殿下こそ思い込みで私を犯人にするのは止めて下さい」