虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「候補は何人かいるそうですが、ベルヴァルト公爵令嬢が最有力と聞いております」

それまで黙っていたユリアーネが得意げな笑顔を浮かべた。

「ええ。お話は頂いていますわ」

「羨ましいですわ。でもユリアーネ様ならば相応しいですわね」

「ありがとう。王太子妃になっても皆様仲良くして下さいね」

ユリアーネは自信に溢れ、まるで女王のような堂々とした態度だ。
まだ正式に決まった訳でもないのに、いいのかな。これでやっぱり婚約が無くなりました、なんてなったら気まずいんじゃない?

それにしてもランセルとユリアーネが……。

小説では無かった展開だ。

ランセルは作中では独身だし、女性関係の描写が無かったし、ユリアーネはベルヴァルト公爵家を継ぐ為に、婿入りしてくれる貴族子息の婚約者がいる設定だった。

結構な変化が起きている。小説の流れはもう殆ど参考にならなそうだ。

逃げる準備をもっと急いだ方がいいかも。

そんな事ばかり考えていたけれど、お茶会の話題は終始、ランセルの婚約の件だった。

お茶会が終わり皆が帰ると、最後まで残っていたユリアーネが声をかけて来た。


「お姉様」

残っているのを見かけた時点で予想はしていたので、落ち着いて答える。

「どうかしたの?」

「お話があります。人払いをお願い出来ますか?」

改まってなんだろう。怪訝に思いながらフランツ夫人に先に部屋に戻るよう伝える。

「それで、話とは?」