虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「そうですわね。王妃様の存在を忘れる者はいないでしょうが、権威を失いかねません」

「そうならないようにしたいのだけど」

「お任せ下さい。素晴らしいお茶会にしましょう」

フランツ夫人は胸を張って宣言する。

「ありがとう、頼りにしているわ」

ほっとした。これで一つ前に進める。

「出来れば定期的にお茶会を開きたいの。顔を出しておくのは必要だし、バルテルの件の情報収集もあるでしょう?」

「初めてのお茶会の招待客の中から情報収集に適任そうな人物に目を付け、次も招待すればよろしいかと。今回の招待客はどのように選びましたか?」

「それはメラニーに任せているの」

「では後ほど彼女に確認します」

かなりテキパキしている。

「ところで王妃様はご自身についての評判は把握されていますか?」

「多少は。貴族達は私を公爵に疎まれている娘だと思っているのでしょう?」

「他には?」

「さあ、知らないけど」

こんな風に聞いて来ると言うことは、ろくでもない評判なんだろうな。

まだ悪女とまでは呼ばれていないと思うけど。

「お茶会の前に知っておくべき情報ですので、はっきりと申し上げますね」

「ええ」

「ベルヴァルト公爵家に関して、社交界ではこのように囁かれております。令嬢ユリアーネ様は美しく健気で努力家な貴族令嬢の鏡だと」

「え、そうなの?」

ついそんな言葉が口から零れた。