虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

女性にしては低い落ち着きのある声。話しやすそうな人だ。

「彼女は信用できるし、カレンベルクの社交界について詳しい。伝達係だけでなくリセの助けにもなると思う」

「本当? 良かった、心強いわ」

お茶会の件も相談できそうだ。

「ロウ、いろいろありがとう。バルテルの件もしっかり調べるから待っていてね」

「頼む。でも、無理はしないでくれよ」

「分かってるって」

それから少しだけ打合せをすると面会終了の時間になってしまった。

ロウに見送られ迎えに来たレオナと共に部屋を出る。もう少し話したかったと名残惜しい気持ちになった。


翌日。相談役になったフランツ子爵夫人が朝食後に部屋を訪れた。

今後はこの時間から夕食前まで勤めてくれるそう。

メラニーとレオナには席を外して貰って、早速お茶会について相談をした。

「半月後に薔薇の庭園でお茶会を開く予定があるんです」

「まあ、それはよろしいですわ。王妃様が王宮に引きこもっていると噂し始める者も出て来ていますので」

「そうなんですか?」

噂が回るのが早すぎない?

「はい。何かと文句を付けたい者は、常に一定数いるのですわ」

フランツ夫人は達観したようにさらりと言う。

「私がお茶会を開く気になったのは、他に表に出る機会が無いからなんです。夜会も無いし、公務も任されていないし、このままでは皆に忘れられてしまうと思って」

そして軽く見られ、罪をなすりつけられる。