虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

私が部屋に到着するまでに、他の誰かが危害を加えた可能性はとても少ない。

「でも……誰かが危害を加えたのではなく、病気で倒れたとか……元から体調が優れなかったかもしれないのだし」

「広間では、私を叱責する程お元気だった。急に倒れるなど考えられない」

ランセルは分かってくれない。

どうしよう、これかなりまずい状況だ。

なんとか形勢を変える言葉を探していると、慌ただしい足音が近づいて来た。

「入れ!」

ノックの音がする前にランセルが声をかける。扉が開き医師と思われる初老の男性と、先ほどの騎士とその部下が入室した。

「直ぐに診てくれ」

ランセル殿下の言葉に従い、医師は真っすぐベッドに向かって行く。

「王妃を部屋に連れて行き、見張っていろ」

続いてランセル殿下が私を睨みながら宣言する。同時に騎士たちが私を囲む。

「ま、待って! 見張っていろって?」

「あなたが陛下に危害を加えた可能性がある。調べが終わるまで大人しくしていてもらう」

「私は何をしていません!」

反論したけれど、ランセルは聞く耳もたない。

騎士たちは強引に取り押さえたりはしてこないものの、距離を縮め退室を促して来る。

納得がいかないし、言いたいことは沢山あったけれど、抵抗出来る雰囲気ではない。

ランセルの憎しみの視線を受けながら、国王陛下の私室を追い出される。

騎士たちに連れられ私は自分の部屋に戻った。