ゆっくりと軋む スプリングの音

ランプが作る 橙と黒の陰影


枕元には、大小
茶と白の 熊のぬいぐるみが二つ


だいぶ皺になった
白いシーツに拡がる あずるの髪

離された唇




「 ぁ… リュ… 待っ… 」


背中に回っていたあずるの手が
何事かを教えようとして、緩く解かれた


「 わかってる 」


遠くを走る、車の走行音に混じって
枕元で鳴っている 携帯の音




「 出な… ぃの…? 」


「 出るよ 」


「 ―― え… ゃ… あ…ん っ 」


「 声、少し我慢しろ 」




口元を押さえ
真っ赤になりながら抗議する
涙目のあずるを、笑いながら抱きしめて


そのまま腕を延ばし
誰からの着信なのか、携帯を確認する




… 公衆電話


それだけでも一瞬、違和感を感じたが


――― しかも時間は、朝の五時




俺はあまり飲む方でも
周りを盛り上げて喋る方でもないけど


仕事柄、それなりに付き合いはあって
朝方、もう何次会か判らない飲みに
誘われる事はたまにある


でもそれは全て、携帯の画面に
名前が表示される相手だけだ




「 ――― はい 」






『 … 俺 』


「 灰谷…?」




俺は動きを止め
あずるもその名前を聞いて
潤んだ目を、大きく見開いた