「智くん、別荘の前を通ってくれる?」

車に乗って、私は言った。
 
「いいよ。」

私の家と別荘は、車なら5分とかからない。

それなのに、私は あれ以来ここに来たことがなかった。
 


「わあ、懐かしい。」

車を降りて 庭に入ってみる。
 
「ここから始まったんだね。」

智くんは 優しく肩を抱いてくれる。
 


「中に入ってみる?」

と言って智くんは 玄関ドアの横に置いてある 植木鉢をずらして鍵を出す。
 
「えー。不用心。」

と驚く私に 笑いかけて別荘の中に入っていく。