ノクターン


私の家は軽井沢でクリーニング店を営んでいた。

カウンターの奥の作業場で 父はいつも洋服の手入れをしていた。

穏やかで子煩悩な父が、私は大好きだった。
 

軽井沢の住民は自営業従事者が多い。

父親が家で仕事をしている家庭も珍しくない。

そういう家庭の子供は、親の働く姿を間近で見ながら成長していく。

私も父が家にいることを自然に受け止めていた。
 

働き者の父は 休日でも作業場に立っていた。

一枚仕上げて何百円の仕事で生計を維持するためには 数をこなすしかなかったのだと思う。
 
優雅で華やかなイメージの軽井沢でも住民は地味で慎ましい生活をしていた。


そしてその生活は観光客や別荘民に支えられていた。

私の家も別荘のオーナーや地元のホテルが大切なお客様だった。