ノクターン


私は、智くんの目を見る。

智くんと必ず目が合うのは 智くんがいつも私を見ていてくれるから。


私が助けを求めたなら すぐに手を貸せるように。

いつも気に掛けて 見守っていてくれる。



私は 胸が熱くなって 声を出す事ができない。
 


お互いの両親が 無口なのは 感無量だから。

言葉にできない それぞれの思いを 抱いているから。


いつか私達も 親になればわかるだろう。



子供達の運命を 揺らせてしまった責任からの解放を。
 


でも、もう大丈夫。


すべてがあったから 今がある。


二人が幸せになる為に 必要だった道のり。

こんなにも愛する人に こんなにも愛される幸せの為に。



そして、二人が一緒にいられる幸せに 感謝できる私達になる為に。
 

「みんな、ありがとう。」

ふいに 智くんが言った。


それは、今私が思っていた言葉で。

私は驚いて 智くんを見る。


智くんは優しい目で 私に頷いてくれる。


『わかっているよ。麻有ちゃんの気持ちは。』

その瞳は そう言っていて。
 


「ありがとう。」智くんを見て 私は唇を動かす。


涙を堪えて声が出ない。

智くんは 私の頭をベールの上から ポンポンと叩いてくれる。
 


「ごめんなさい。私、またすごく良い写真が撮れちゃった。」



お母様の声に はっとしてみんなを見る。

私達は 温かな笑い声に包まれていた。