ノクターン


海沿いの夜景を眺めながら走る車は あっと言う間に横浜に到着してしまう。

智くんはランドマークタワーの地下に車を停めると
 
「食事の予約まで、少し時間があるから散歩しようか?」と言った。


地上に出ると、大きな観覧車が瞬いている。
 
「うわあ、きれい。」
 
「きれいだね。」

私達は、メモリアルパークの運河沿いをゆっくり歩いた。

そしてどちらからともなく立ち止まり 水辺のフェンスにもたれてお互いの近況を話す。
 


私の胸の中に、智くんに会えなかった長い日々の悲しさが甦ってくる。

智くんを意識して、夢中で勉強した日々。

智くんに近付きたくて。

でも努力すればするほど 智くんには近付けないと知った日々。
 


でも、あの日々があったから こうして智くんと再会できた。

智くんを思って努力した日々が報われた。


智くんに優しく見つめられて 私は胸がギュウと収縮するみたいな切なさを感じる。



智くんに愛されたいと渇望している私がいた。