智くんも、紺色のブレザーとスラックスに着替えて 私達は、部屋を出る。
松濤のご両親に、お願いしていた婚姻届を受取りに。
そして、そのまま届出することを 報告するつもりだった。
「いらっしゃい。」
と出迎えてくれたお母様は コートを脱いだ私を見ると
「麻有ちゃん、綺麗よ。」
と言って涙汲む。
「なんか、ジーンときちゃった。さあ、上がって。」
そんなお母様に、得意気に微笑む智くん。
リビングには、お父様も居て。
「こんにちは。」と言う私を見ると、
「麻有ちゃん、花嫁みたいだ。」
と、一瞬息を飲む。
今日は、お茶を入れてくれたお母様が
「でしょう。なんか私、涙出ちゃった。」
と言う。
「俺も。ウチが来て貰う方なのに どこにも出したくない、なんて錯覚しちゃったよ。」
とお父様が、しんみりと言う。
「そうよねえ。軽井沢のご両親は、もっと寂しいのよ。智之、責任重大よ。こんな可愛いお嬢さん、大切にしないと。」
「大丈夫。麻有ちゃんは、俺にぞっこんだからね。」
と、智くんは私を見る。
「いやな子ね。麻有ちゃん、智之がわがまま言ったら いつでも言ってね。」
リビングは 明るい雰囲気になっていく。
「すごく大事にしてもらっています。本当に。」
私は、幸せいっぱいの花嫁だった。