「お待たせ。」

とリビングに戻ると、私を見た智くんは、
 

「麻有ちゃん。」


と言って絶句した。
 


「どうしても、今日着たくて 買っちゃったの。」

私は、照れながら言う。



私を見つめる智くんの瞳が 赤く潤んでくる。

智くんは ソファを立って 私を抱きしめた。
 


「ありがとう。麻有ちゃん、ありがとう。」


智くんの声は震えて 語尾が軽く途切れていた。



私の頭を 強く胸に押し付けて。

私の髪に 顔を寄せて 静かに呼吸を整えながら。
 


私は、感動で胸が震える。


こんなにも愛されて。

私がこんなに愛する人に。


智くんの鼓動を聞きながら、込み上げる幸せに涙が流れた。
 


しばらく抱いた後で、智くんは 静かに私の肩を離す。
 


「麻有ちゃん、ありがとう。」

今度は、私の目を見て言ってくれる。
 

「私こそ。ありがとう。」

私の目から溢れた一筋の涙を、智くんは指で拭ってくれる。



そして、私の左手を取ると 自分の掌と合わせる。

指輪と指輪をくっ付けて。
 


「死ぬまで愛することを、誓うよ。」

智くんは言う。


熱い瞳で。
 

「私も。私も、誓います。」


私の目からは、もう一筋 涙がこぼれた。