ノクターン


でも楽しい日々は終わってしまう。旧盆入りの朝、智くんは東京へ帰った。
 
「また来年も来るからね。そうしたら一緒に遊ぼうね。」

帰り際、智くんはそう言って車に乗った。

私は取り残された寂しさと またいつもの毎日にもどる切なさに涙を貯めて見送った。

2週間足らずの楽しかった夏は終わってしまった。
 
 


智くんと出会ったことで知らない世界を見た私は 色々な疑問を感じていた。
 
「ねえ、パパ。智くんのおうちは どうしてお金持ちなの?」

私の無邪気な質問は、たぶん父を傷つけていたと思う。
 
「それは、智くんのお父さんが大きな会社の社長さんだからだよ。」
 
「大きな会社って、だいたいどれ位?」
 
「そうだなあ、早苗ちゃんの家の100個分くらいかな。」
 
「えー。そんなに大きいの。どんなお仕事しているの?」
 
「廣澤工業っていう機械を作る会社だよ。」
 
「智くんのお父さんが機械を作っているの?」
 
「智くんのお父さんは社長さんだから作らないよ。色々な機械の作り方を考えたりするんだよ。」
 
「へえ。すごいね。だからお金持ちなんだね。智くんのお父さんは、どうやって社長さんになったのかな。」
 
「きっと いっぱい勉強して、色々な事を覚えたんだよ。麻有子もたくさん勉強して、大きな会社で働けば お金持ちになれるよ。」



子供の素朴な質問は、とても残酷だった。