間一髪。

ほっとして「はぁ」と大きくため息をつく。
やっと解放してもらえる、そう思った瞬間、

「……っ、ちょ、ちょっと、」

フッと空気が動いて夏目くんの熱を帯びた吐息が私の耳に触れる。

その熱が伝染するみたいに、私の身体も熱くなって息が上がる。

「……んっ、」

ひどい風邪をひいた時みたいに頭がぼーっとして。

味わったことのない感覚に目の奥が痛くなって視界がぼやける。

やめてと強く突き飛ばしたいのに、その甘い刺激に全身が痺れて力が抜けて。

やめて、やめて。

これ以上、さわらないで。

「っ、やめてよっ!」

「フッ、」

私の首筋から顔を離した瞬間にそういえば、彼は息を吐くように笑った。

「泣くぐらい気持ちよかった?」

「はぁぁっ?!」

「悪いけど拒まれるほど興奮するもんだよ」

「意味わかんないっ!」

「そんなこと言って、触ったら気持ちいいって顔するくせに」

「そんなことっ!……っ、ん」

「身体は正直だね」

目の前のケダモノは、勝ち誇ったように呟いてから、さらに私の身体に触れた。