「あ、でも……」
「何?雪」
バレー部の雪ちゃんの声に光莉が首を傾げた。
「いや、これも噂なんだけど、どうやら3年の先輩と仲良さげだって聞いたことがあって」
『先輩』そのワードに、保健室で誰かを待っていた夏目くんの顔が浮かんだ。
「付き合ってるっていうのは聞いたことないけど、夏目くんが女の子からの告白を全部断るのはその先輩のことを想っているからとかなんとか」
雪ちゃんがそう言えば、同じくバレー部の百合ちゃんが「病弱説どこいった!」なんて突っ込んだ。
「あ、もしかしてその先輩って、天井 月子先輩?」
と光莉。
「そうそう!月子先輩!クールビューティーな人だったよ。去年一度だけ見た程度だけど」
「へ〜、いや、私も同じ放送委員の先輩から月子先輩と夏目くんの話聞いたことあって。でも月子先輩には別に好きな人がいるって言ってた気がする」
「え〜!そうなんだ。実際どうなんだろうね〜」
『天井 月子』
その名前が何度も頭の中で響く。
夏目くんが、相手してもらってるなんていってた人はその人なんだろうか。