「郁田さんっ」

『もう二度と関わることはないだろうし』そう思ってたのがついさっき。

2時間目の休み時間、みんなと移動教室に向かっていたら、不意に後ろから名前を呼ばれた。

今一番聞きたくない声だった。

私が恐る恐る振り向いたと同時に、両側から「夏目くん?!」なんて驚いた声がして。


あぁ。

……今すぐ帰りたい。

「……な、何?」

みんなの前。

しかも他のクラスメイトの子たちも行き交う廊下。

あからさまに嫌な態度をとって目立つことは極力避けたい。

「体調どうかなって心配で」

夏目くんが眉毛を少し下げてそういえば、光莉たちが「まぁ!」なんて大袈裟に反応した。

あぁ、これだ、夏目くんの狙い。

こんな空気じゃ、無視なんかできないし。