「きっと自分も苦しい思いしてるから、他人の痛みに敏感なんだろうね。だから菜花のこともあんな風に助けてくれたんだよ〜カッコいいわ〜夏目くん」

と目をうっとりさせる光莉。

「は、はあ……」

「入学したばっかりの時、ものすごく告白されてたけどそれも全部断ってたんだけどね、」

「それも、心臓が弱いなら辻褄が合うってことか!思い切り遊べないことを女の子に申し訳ないとか思うんじゃないの!あの夏目くんなら!」

「そうなのそうなの!」

「そういう守ってあげたくなるような母性本能くすぐられるところ含めて、付き合えなくても女子がほっとかない理由だよね〜」

「へ、へ〜〜……」

どうしよう。

みんなの妄想はどんどんヒートアップしていくけど、全然話に乗れない。

だってそんなことあるわけないもん。

『俺のこと気持ちよくしてよ』

保健室で初めて会ったときに言われたセリフを思い出してゾッとする。

心臓弱いどころか、羽毛の生えた心臓を2個ほど持ってそうだ。

でももう二度と関わることはないだろうし、今日からはまた私は穏やかな生活を送るんだ。

夏目 涼々とは、生きる世界が違うんだから。