「体育を受けない本当の理由」

「んー言いたくない、かな」

「えっ……」

「けど……」

突然、夏目くんの手がこちらに伸びてきたかと思えば、その手が私の首筋に触れて

「ちょっ、な、……やっ」

次の瞬間、その細くて長い指の腹がスーッと肌を撫でた。

「やめてよっ!急になにっ、話そらそうとしても無駄だよっ」

「そらすつもりなんてないよ」

「じゃあっ……」

勝手に触れてきた夏目くんをキッと睨む。

『じゃあ、一体なんの真似よ』

「……郁田さんが俺の相手してくれるなら、話してあげてもいいよ」


わざと吐息がかかるように私の耳元でささやく彼の声に、身体が無意識にビクッと反応する。


「やめてっ。離れてよっ!わかったよ、話さなくていい。相手なんてしないからっ、」

そう抵抗すれば、夏目くんが私の耳のそばで「フッ」と息を吐いて続けた。

「っ、……」

背筋がゾワっとして顔が歪む。

「……やっぱり、郁田さんってここらへん弱いの?」

また話がズレている。

本当になんなんだこの人……。