「笑ってたよ。ね、一口ちょうだい」

「えっ……ちょ、」

スッと取り上げられたココア缶を目で追えば、

飲み口に唇をつける寸前の夏目くんの伏し目がちの目が、視線を端にしてこちらを見た。

その表情が何とも色っぽくて不覚にもドキッとしてしまったのが悔しくて目をそらす。

こんな人にときめくなんて、ないない。
顔は確かにかっこいいかもしれないけれど。

「ダメ?もともと俺が買ったやつだけど」

「……っ、いや、その、」

そりゃ、夏目くんのお金で買ったものだから私に飲むのを止める権利はないのかもだけど。

でも……。

「あ、間接キスになっちゃうのがいや?」

「……っ?!」

ほんっとにこの人は、なんでそう言うことを平気で言うのかな。

呆れる。

「……別にっ、」

「フッ、郁田さんってほんと見かけによらずなんだね。耳真っ赤」

「うるさいっ」

思わず声が大きくなりながら耳を隠すように手ぐしで髪を解く。