「ほんと下品……」

「人間のもともと持ってる本能だよ。なにも下品じゃない」

「夏目くんは露骨すぎるの!」

「いまさら郁田さんに隠してもしょうがないでしょ」

「っ、」

言い返す言葉が見つからない。

夏目くんが言ってたようにこのタイミングで教室に帰る勇気はないから。

その場にもう一度座り直して、もらったココアの蓋を開けて口をつける。

フワッと暖かい甘さが鼻を通って少なからず心が落ち着く。

あったかい……。

ココアの甘さが口いっぱいに広がってそれがあまりにも美味しくて口元が緩む。

「ココア好きなんだ」

「えっ……」

楽しそうにこちらを見る夏目くんとバチッと目があってしまった。

慌てて口角をもとに戻してから目をそらす。

「やっと笑った顔見れた」

「……笑ってなんかっ」

ココアを飲んで思わずニヤけてしまった顔を夏目くんに見られたことに恥ずかしさでそう返す。

今のは、『ココアの味』に思わずほころんだだけで。