「そんな警戒しないでよ。言ったでしょ。悪いことしたと思ってるって。俺のせいで郁田さん保健室から出て行っちゃったから」
「……っ、」
「お詫び」
なにこれ。
調子狂う。
あんな風に出て行った私のことなんてほっといてくれればいいのに。
「……なに、企んでるの?」
「ふはっ、ひどいなぁ」
夏目くんは目線を私から離して軽く笑いながらそういう。
だって、彼の本性を知った今、ここまでしてくれるなんて何か裏があるのかとしか思えない。
「そんなことより、郁田さんそんなに体調悪いなら帰ったほうがよくない?」
「え、あ、いや……」
言われて気がついたけど、お腹の痛み、さっきよりもうんと楽になっている。
「帰らないの?」
「うん。なんかちょっと楽になってるから、」
あんまり認めたくないけど、夏目くんが私のお腹にココアを当ててくれたおかげなのかな。
渡されたココアを両手で包み込むように持ちながらそんなことを思う。
「……えっと、その、色々とありがとうございました。じゃあ私、教室に戻りますっ」
彼と話すのは今度こそこれで最後だ。
そう確信して、その場から立ち上がろうとした瞬間───。



