「……ごめん、そうだよね。私が隣にいると気が散って──」
「いや、違う!!ごめんっ!!ちょっと生徒会のこととかいろいろ頭の中ぐちゃぐちゃしてて……」
「……っ、」
「郁田さん、」
パイプ椅子から立ち上がった郁田さんが俯いたまま動かなくて。
顔を覗き込めば、明らかに悲しそうな顔をしていた。
ほんっとバカだ。
こんな顔、させたいわけじゃないのに。
俺が笑わせるって決めたじゃん。
なんでこんなに、うまくいかないの。
今まで、サラッとなんでもこなせていたはずなのに。郁田さんのことになると途端に不器用になってしまう。
「……ごめん。俺、」
なんて謝ろうか、まだ言葉は決まっていないなかそう口走ったら、
郁田さんがゆっくり口を開いて。
「……夏目くん、私のこともう、好きじゃないのかな?」
震えた声でそう言った。
「……は?」
一瞬、郁田さんがなにを言っているのか、理解できなくて。