「なんか夏目くんと学校でふたりきりって久しぶりな気がする」

「そう言われればそうかもね」

放課後。

次期生徒会長立候補者演説会のための準備で、

生徒会室の隣にある資料室で、郁田さんとふたりきり。

今までなら学校が終わればふたりで少し寄り道しながら駅まで一緒に帰ったりしていたけど、

生徒会のことが落ち着くまでは、その時間は当分我慢しなきゃいけないかもしれない。

正直、そのおかげで郁田さんとふたりきりの時間が減ることにホッとしている自分もいる。

忙しければ、考えなくて済むから。

郁田さんは『学校でふたりきりって久しぶり』

なんて言ったけど、それは俺が敢えてそうならないようにしていたから当たり前だ。