「なんで夏目くんが……」
「あれ、覚えてない?郁田さんのクラスにノート置いたあとここに戻ってきてみたら、郁田さん寝ちゃってたから。一瞬気絶してるのかと思って焦ったけど、気持ちよさそうに寝息立ててたから大丈夫だなって」
「……っ、」
ね、寝息……。
私、この人に寝顔見せちゃったわけ?!
いや、故意じゃないから完全に事故だけど!
だからってなんで夏目くんの膝になんて!!
保健室で彼にされたことを思い出して、出来るだけ距離を取ろうと階段の壁に背中を預けると。
ボトン、と何かが落ちる音がした。
ん?
一段下の階段に目をやれば、そこに蓋付きのココアの缶が落ちていた。
これって……。
「ん」
ココアに目を離せないでいると、それが隣にいる彼の手に取られてそのまま私の方へと差し出された。
「こういう時は、お腹温めたほうがいいって聞いたことあったから」
「えっ……」
なんで……。
よく知りもしない私にここまでするの?
まさか、まだ身体目当てとか?!



