「あのね、私、夏目くんに渡すものがあるの」

「……あぁ、ジャージなら長山から受け取ったけど」

「違う。本当はそれと一緒に渡したいものがあったの」

「えっ、」

思い出したそれをカバンを開けて取り出す。

もう渡せないと諦めていたけれど。
カバンに毎日入れていた。

きっと、心のどこかで願っていたんだと思う。

また、夏目くんと話せる日が、踏み出せる日が来ること。

「これ」

顔が熱くなったまま、取り出したそれを彼の前に差し出して。

紺色の小さなラッピング袋を受け取った夏目くんの目が開いた。

「え、俺に?」

「うん。夏目くんの好みに合うかわからないけど。修学旅行の時に見つけたの。その、私ばっかりもらってばかりだったし、その、」

本当はそんなんじゃない。
もちろんお礼したいって気持ちももちろんだけど。

単純に、夏目くんに何かをプレゼントしたかったから。

それなのに可愛くない言い方をしてしまう自分に呆れてしまう。

ダメだ、変わるって決めたじゃん。