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ふわっと鼻をくすぐる香りが心を落ち着かせる。
爽やかなシトラスの香りのあとにほんのり温かみのあるウッディの香りが鼻腔を抜けて。
頬にはほどよく涼しい風があたっているけれど、身体は何かに覆われているような。
朝からギューギューときつく絞られるような痛みがあった下腹部は、特に、温かい。
さっきまで、重苦しかった気分が嘘のよう。
「ん……」
ものすごく心地いい。
そう思いながら瞼をゆっくりと開けた。
「あ、起きた?郁田さん」
……へ?
うっすらと目を開けると、綺麗な顔がこちらをまっすぐみていた。
え。
な。
なに、これ。
「えっ、ちょ……まっ!」
知らぬ間に倒れていた身体をガバッと全力で起こす。
意味わかんない!!
意味わかんない!!
なんで私、夏目くんの膝の上で寝ているの?!



