「これ、3組に持っていけばいいんでしょ」
「そうだけど……でも……」
「俺だってさっきのこと少しは悪いと思ってるよ」
「え……」
あの夏目くんから、まさかのセリフが飛び出してきて完全に返す言葉を見失う。
『悪いと思ってる』なんて言われて、それ以上責められるわけがないし、それに、こんなふうに助けてもらったら、さらに何も言えないじゃん。
「ちゃんと向こうで休んでてよ」
「え、あっ、ちょ……」
夏目くんは、引き留めようとした私を置いて、長い足でスタスタと階段をのぼりだしてあっという間に見えなくなった。
あんな人に借りを作るなんて嫌だし、もう少し粘って意地でも取り返して自分で持っていくことだってできたはずだけど、
正直、身体が限界だった。
ぼーっとしてて、あまり頭が回らなくて。
私は、夏目くんに言われた通り、階段をのぼった左側にあるドアを開けて、その非常階段に腰を下ろした。
階段には涼しい風が通って気持ちがいい。
外の空気ってこんなに違うんだな……。
ちょっと、落ち着くかも。



