「涼々、ものすごく嬉しそうに言ったのよ」

「えっ……」

『郁田さんが、俺の傷痕みて言ったんだよ。頑張った証しだって』

あのときの涼々の吹っ切れた顔、忘れられるわけがない。

私だって、同時に救われたんだから。

きっと、涼々が今まで出会ってきた人が口を揃えて言ったと思う。

『いつか目立たなくなるよ』

私もそのひとりだった。

この傷がいつか消えることが涼々にとって前に進むための方法だって。

なかなか菜花ちゃんのようには考えられないと思う。言葉にすることだってためらうことだろう。

だから、かっこいいって思った。

「涼々の傷のことも、瑠々ちゃんのことも。菜花ちゃんは本質から目を逸らさずにちゃんとぶつかったからこそ、涼々は変われたよ。ほんと、あなたの話をするときの彼の顔、見せてあげたい」

彼女の話をする彼の顔を思い出すだけで、こっちまで顔が綻んでしまうのだから。