『……まだ気にしてるの?背中の跡。涼々が体育に出ないのそのせい?』

『んー、まぁ、』

『おばさんたちには話した?』

『話せるわけないよ。普段でさえ気を遣って話してるのに……』

『まあ、その気持ちは分からなくもないけどさー。ちゃんと息抜きしなよー?ストレス溜めるのは身体に良くないし』

背中の傷痕を隠すのと同じように、涼々が自分の本当の気持ちを周りに隠しているのはすぐにわかった。

その気持ちはわかるし、涼々は施設にいる時からそうだったから。

七夕の時、涼々だけ短冊に何も書いていなかったし、

誰かと喧嘩になっているのも、反抗しているのも見たことがなくて。

常に笑顔で心に蓋をして押し殺してるように見えていた。

『けど、息抜きって、具体的に何すればいいんだろう。好きなこととか趣味がないからな〜』

『んー、あ!ハグするとストレスが軽減されるって聞いたことある!』

『へー……』

『やってみる?……なーんて──』

半分は軽いノリ、

半分は涼々がいつか壊れちゃうのが怖くて、壊れない方法があるのなら、なんでもいいからすがってみたいと、守ってあげたいと思ったから。

『…みる、』

『え?』

『ハグ、してみていい?』

その時初めて、涼々が甘えてきたと思う。