「戻ろうか。郁田さん、カバンお店に置いたままだよね?」
「あっ、本当だ」
すっかり忘れてた。
私たちは並んで歩きながら、レストランへの道を戻る。
「夏目くん、」
「ん?」
「ジャージ。もう大丈夫だよ。ありがとう」
ジャージを貸してくれたのは、お店の外を汚れたままの格好で私を歩かせないようにするためだったんだよね。
そういうさりげない気遣いに、夏目くんに初めて会ったときもそうだけど。
何だかんだ助けてもらってるんだよな。
いつだって余裕そうな顔で憎まれ口ばかり叩くから忘れそうになるけど。
感謝しているところはあるし、むしろそういうところはとても感心している。
調子に乗るから本人には言わないけれど。
「全然大丈夫じゃないから着てて」
返そうとしてジャージを脱ごうとしたら、襟の方をグッと抑えられた。
え、大丈夫じゃない、とは。



