「ったく……」
小さくため息を吐きながらも、夏目くんに言われた通り、目線や身体を動かさないようにする。
キスマークなんてつけられても困るし。
「目つぶって」
私の隣に座った夏目くんがサラッとそういう。
「え?!」
思わずしりぞいて身体を動かしてしまった。
「大丈夫。嫌がることはしないから」
「……」
彼の言葉に従って、仕方なく目を瞑る。
仕方なくって……。そんなのはもう嘘。
心のどこかで、流されてもいいと思っている自分がいる。
恋をすると人間の思考はチンパンジー並みになるって聴いたことがある。
判断力が鈍るって。
あぁ、もう明らかにそれだ。
今の私はチンパンジー。
「俺に従順な郁田さんってかなりレア」
「うるさいよ、一体なんのマネ?」
目を瞑ったままそういえば「まあまあ」という夏目くんの声がしてすぐ、
首元にひんやりとした感触が伝わって。
突然のことで目をバチッと大きく開けた。



