「やっぱり、濡れてる郁田さんっていつもより増してヤバイね」
「っ、ちょ、」
顎に添えられた指が、今度は髪の毛に触れて。
「あの、夏目くん、用がないなら……」
私を連れ込んで、また変なことするために、わざわざ呼んだの?
そう思うと、とたんに心臓が絞られるように苦しくて。
所詮、やはり夏目くんが私に執着する理由なんて、そんなもんなんだ。
そう思って、彼の手を掴んで無理やり剥がそうとした瞬間。
「ちゃんとあるよ」
夏目くんは、私の髪に触れていた指をスルリと離して、
部屋の端に置かれたカバンの方に向かった。
え、何してるの。
「郁田さん、そこから一歩も動かないでよ。顔も動かしちゃダメ。瞬きはしていいよ」
「いや、なにそれ……」
いきなりの要求に戸惑う。
「いいから。じゃないとキスマークつける」
「はぁぁ?!」
キスマークなんてそんな卑猥なことを軽々しく!!
何かを鞄から取り出した夏目くんが、私のその声に反応して、イタズラっ子のように笑う。
一瞬でも、その顔が、可愛いと思ってしまったのが悔しい。



