「だって、メッセージ既読無視だったし」
「あっ……」
返事するなんて頭回らないぐらい、誰かにバレないようにここに来ることで頭いっぱいだった。
「男子部屋に来るなんて、郁田さんもずいぶん悪い子になったね」
ニッと口角を上げた夏目くんの顔がむかつく。
のに、ドキドキ速く音立てる心臓にさらに夏目くんを意識してしまう。
なんか、髪の毛濡れてるし。
シャンプーのいい匂いがするし。
お風呂、もう入ったのかな。
「な、夏目くんが呼んだんでしょーが」
「来たのは郁田さんの意思でしょ?」
「うっ……」
どうしよう。言い返せない。
夏目くんのいう通り、ここに来たのは私の意思で。
前の私なら絶対こんな風に夏目くんの言いなりにはならなかったはず。
「あがって。あんまり時間ないから」
そう言ってテクテクと部屋の奥へと進んでいく彼の背中について歩く。



