まだ鮮明に覚えている。
あの日──。

バチバチという音と熱気で、目を覚まして。

部屋のドアを開けると、リビングがオレンジ一色に染まっていて。

俺の知っている家ではなくなっていた。
たった数分にして。

ここはどこだ、と固まった。

目が痛くて息ができなくて、とにかくものすごく熱くて。

出火原因だった隣の人の部屋のすぐ横に位置した両親の部屋は火が回ってきたのが1番速かったらしく。

ふたりに会いに行こうとリビングを歩いて部屋のドアの前に着いた時には、

完全に炎に塞がれていて先に行くのは困難だった。

身体の限界もきていた俺はその場でそのまま意識を失って倒れてしまい。

そのあとすぐに消防士に救助されたおかげで、なんとか一命を取り留めたらしいけど、

俺以外、何も残らなかった。

しかも、大きな火傷といういらないおまけ付きで。