喉に何かが詰まったような感覚と同時に目頭が熱くなる。

すごいな、郁田さん。

この傷に呪われている。
ずっとそう思っていたのに。

俺がこの傷を呪っていたんだって気付かされて。

「郁田さん、俺のこと嫌いなんじゃないの」

「えっ、」

「なんで嫌いな人にそこまで言ってくれるの。そんなこと言われちゃ、勘違いしちゃうんだけど」

ヘラッと笑って見せれば、郁田さんが涙を軽く拭いながら顔を険しいものに戻した。

「勘違いって……変なことしようとする夏目くんは嫌いだよ。けど、小学生の頃の夏目くんは、嫌いじゃない」

「フッ、その言い方ずるいなぁ、」

「……痛かったよね、」

「え?まぁ、当時は……ね」

俺の背中を再び見つめて呟く彼女の声があんまり優しいから。

調子狂う。
嫌いなくせに。
無意識に寄り添うんだから。