「俺、この家の養子でさ。本当の親は2人ともその時の火事で亡くなってるんだ」

「えっ……」

「頼れる親戚もいなくて。火事の後、引き取ってくれる人が見つかるまでの間は施設にいて。小4からこの家にお世話なってるかな」

「……そっか。その、ごめん、なんて言ったらいいか……夏目くん、全然そういうの見せなかったから」

彼女の声がいつもと違う細い声で。
こんな状況にもかかわらず、胸がドキッとする。

「んーまぁ、ベラベラしゃべることでもないからね。このこと今の養親にも言えなくて。すごくいい人たちだから迷惑かけたくないし。だから、常に成績トップと模範的な生徒でいるっていうのを条件に、独断で校長と担任に頭を下げてなんとか認めてもらって……今って感じ」

「……だから」

「うん、裏表激しいのはそのせい。俺、根は全然ダメ人間なんだよ。保身のために必死になっていい子を演じてる。学校でも家でも……ずっと本当の自分を見られるのが怖いんだ。自分の汚い身体が憎い。フッ、ダサいよね、」

「っ、、なにもダサくないよ!!」

「えっ……」

突然、郁田さんが大きな声を出したのでびっくりして顔をあげれば、

彼女の瞳が濡れていた。