「郁田さん、信じてくれるの？」
「なにそれ。この傷見せられたら誰だって……。それに、わかるよ。今の夏目くんは嘘ついてないって」
「え、」
郁田さんの口から思わぬ言葉が出て驚いてしまう。
なんで。
嫌いだって突き放そうとしてたくせに、信じてくれるんだ。
「夏目くん、私に背中を見られてからずっと目を合わさないんだもん」
「……っ！！」
ハッとして顔を上げる。
「いつもの夏目くんは自信満々で余裕そうなのに。今は違うから。怖がってるみたい」
普段、俺のことを厄介者扱いしてて関心なさそうなそぶりばかりするのに。
ずるいよ。
「……フッ、演技だったら？同情買って郁田さんに触れようとしてるかも」
「同情で夏目くんの言いなりになるぐらいなら、もうとっくにそうなってるよ」
「……っ？！……ハハッ、そうかもね。……郁田さんってやっぱり面白いわ」
思いの外、今から話そうとしていることに自分がとてつもなく緊張していて、
その気持ちを自分自身にもごまかすように笑うと、郁田さんがほんの少し俺との距離を詰めた。
